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行政書士に対する適切な英訳

ライターさん(最終更新日時:2015/10/25)投稿日:

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「行政書士」が“administrative scrivener”と英訳され、「司法書士」が“judicial scrivener”と英訳されるのを頻繁に目撃します。幾つかの和英辞典は、これらの訳を「行政書士」と「司法書士」の英訳として採用します。しかしながら、これらの英訳は極めて直訳的な英訳で英語圏では「行政書士」や「司法書士」の意味を的確に伝える英訳とは思えません。

 

例えば、ウィキペディア(英語)によれば、“A scrivener was traditionally a person who could read and write. This usually indicated secretarial and administrative duties such as dictation and keeping business, judicial, and history records for kings, nobles, temples, and cities.”(“scrivener”とは、伝統的に読み書きできる人のことだった。これは、通常、王、貴族、寺院及び市のための事業記録、司法記録及び歴史的記録の保管並びに口述筆記などの書記的及び行政的義務を指称した「以下の日本語訳はすべて論者による」)。すなわち、歴史的起源から言えば、“scrivener”とは、口述筆記や記録保管に従事する書記官などの仕事の総称でした。

 

また、同じウィキペディア(英語)は、“scrivener”の現代的役割に関し、“Scriveners remain a common sight in countries where literacy rates remain low; they read letters for illiterate customers, as well as write letters or fill out forms for a fee. Many now use portable typewriters to prepare letters for their clients.”(“scrivener”は、識字率の低い国々では一般的に見られ、彼らは、料金を取って、文盲の顧客のために文字を読み、文字を書き、あるいは書式に記入する。多くの“scrivener”は、今では、彼らの顧客のための文字を作成するのに携帯タイプライターを使う)。すなわち、現代における“scrivener”は、文盲の人々のための代書を主な仕事とし、識字率の低い国々で特に存在意義があります。したがって、日本のような識字率が100%に近い国における法律専門職である行政書士や司法書士に、「代書」という点にのみ着目して“scrivener”を英訳として使うのには無理があると考えます。

 

一方、弁護士は、一般的に、“lawyer”と英訳されますが、Black‘s Law Dictionary によれば、“A lawyer is a person learned in the law(法律の学識がある人); as an attorney(米国の弁護士), counsel(法廷弁護士) or solicitor(事務弁護士); a person licensed to practice law(法律業に従事する免許を与えられた人).” と定義されます(Black‘s Law Dictionaryは、米国では最も権威のある法律用語辞典の1つです)。この定義によれば、法律業に従事する行政書士や司法書士も“lawyer”に該当することになります。

 

ところで、イギリスやアイルランドでは、弁護士が”barrister”(法廷弁護士)と“solicitor”(事務弁護士)とに区別されています。米国も、元来、イギリスと同じコモンローの国ですから、当初は”barrister”(法廷弁護士)と“solicitor”(事務弁護士)の区別が存在しました。ところが、”barrister”(法廷弁護士)と“solicitor”(事務弁護士)の区別は米国では19世紀後半頃に廃止され、現在の米国には、”barrister”(法廷弁護士)や“solicitor”(事務弁護士)という職業は存在しません。しかしながら、19世紀までは”barrister”(法廷弁護士)と“solicitor”(事務弁護士)の区別が存在した経緯から、Black‘s Law Dictionaryでは、”barrister(counsel)”(法廷弁護士)及び“solicitor”(事務弁護士)が“attorney”と併記されていると解されます。なお、現在の米国弁護士には、通常、“attorney”が使われます。

 

時々、行政書士を“solicitor”と同視する行政書士の先生方がいらっしゃいます。ウィキペディア(英語)は、“solicitor”(事務弁護士)の定義に関し、“Solicitors are lawyers who traditionally deal with any legal matter apart from conducting proceedings in courts ・・・ with some exceptions.” (“solicitor”とは、一部の例外はあるが、伝統的に法廷における訴訟行為以外のあらゆる法律問題を扱う“lawyer”のことである)。すなわち、“solicitor”とは、法廷外の法律事務に専業する弁護士のことを指称します。


確かに“solicitor”と行政書士は、仕事の性質において類似する面もありますが、法律事務と非法律事務の区別に関する事件性必要説に立っても行政書士を“solicitor”と同視することには無理があると考えます。上記定義でも「一部の例外はあるが・・・」と言っているように、イギリスの“solicitor”は、一部法廷業務も扱いますし、扱える業務が事件性で区別されている訳でもありません。もっとも、行政書士を“solicitor”と同視する行政書士の先生方は、行政書士の社会的地位確立や職域拡大を念願して“solicitor”と同視するのかもしれません。

 

現在、行政書士会は、「行政書士」の英語表記として「Gyoseishoshi Lawyer」を公式に用い、行政書士会連合会は、これを商標として登録しています。これに対し、平成18年に、日本弁護士連合会は、「Lawyer」の名称は法曹有資格者であるとの誤解を与える可能性があることを理由として、「Lawyer」の名称の使用を取りやめるように行政書士会連合会に申し入れました。しかしながら、日本行政書士会連合会は、有識者会議において検討し、「Lawyer」の使用は必ずしも法曹に限定されないとして日弁連の申し入れを断りました(平成19年4月19日 日行連発第79号)。その後、ADR参入の為、日弁連の協力が必要になり、平成19年10月以降、行政書士の月刊誌「日本行政」から「Gyoseishoshi Lawyer」の表記が消え、日本行政書士連合会は、「Lawyer」使用を自粛する傾向にあります。

 

とはいえ、行政書士に対する“administrative lawyer”及び申請取次行政書士に対する“Immigration Lawyer”という呼称は、英語を解する外国人には馴染み深くなっています。仮に「Lawyer」を削除したら、英語を解する外国人には行政書士の英訳として意味が通じないでしょう。

 

次に、「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」という法律があります。同法でまず理解しておかなければならないのは、外国弁護士と外国法事務弁護士の違いです。同法は、外国弁護士を「外国・・・において法律事務を行うことを職務とするもので弁護士に相当するもの」と定義します(同法2条1号)。一方、外国法事務弁護士を「第七条の規定(法務大臣の承認)による承認を受け、かつ第二十四条の規定による名簿(日本弁護士連合会に備える外国法事務弁護士名簿)への登載を受けた者」と定義します(同法2条3号)。つまり、外国弁護士が日本国内で活動するには、法務大臣の承認を得て、日本弁護士連合会の外国法事務弁護士名簿に登載されなければなりません。これは、外国法事務弁護士制度として日本では周知されています。

 

一方、条約は、通常、相互的なものですから、条約相手国における外国法事務弁護士制度も存在します。とはいえ、条約相手国における外国法事務弁護士制度は日本ではあまり知られていません。例えば、米国では、外国法事務弁護士を“Foreign Legal Consultant”と呼んでいます。ここで米国ニューヨーク州の外国法事務弁護士制度を見てみましょう。

 

このニューヨーク州外国法事務弁護士制度に関する以下の資格要件は特に注目に値します。§ 521.1 General regulation as to licensing(資格付与に関する一般規則)(a)・・・(1) is a member in good standing of a recognized legal profession in a foreign country, the members of which are admitted to practice as attorneys or counselors at law or the equivalent and are subject to effective regulation and discipline by a duly constituted professional body or a public authority(外国で資格ある法律職として適正な立場にある会員、当該会員は事務弁護士又は法廷弁護士若しくはそれらと同等の者として実務に携わる資格を付与され、正当に設立された同業者団体又は公的当局による実効的な規制又は懲戒に服していること)(American Bar Association(米国司法協会)のウェブサイトhttp://www.abanet.org/cpr/mjp/home.html))。

 

当該資格要件の“attorneys or counselors at law or the equivalent”「事務弁護士又は法廷弁護士若しくはそれらと同等の者」は、日本で言えば、弁護士だけではなく、他の隣接法律職も含まれる可能性があります。実際、過去に行政書士がワシントンDCのForeign Legal Consultant(外国法事務弁護士)として登録した前例や、現在、日本の弁理士がカリフォルニア州のForeign Legal Consultant(外国法事務弁護士)として登録している例(http://blog.goo.ne.jp/svpatent/e/015ab2d915f979ba03eca4c26b0dc815)もあります。以上のことを勘案すれば、英語圏における「lawyer」の定義と日本の弁護士の定義に包含される職域は異なり、「Lawyer=弁護士」という単純な英訳が成り立たないことがわかります。

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