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人間は眠らないとどうなるの? ~睡眠の役割について~

ライターさん(最終更新日時:2012/9/19)投稿日:

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はじめに

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皆様は規則正しく十分な睡眠をとれていますか?
……かく言う私は、とても規則的とは……。( ̄ω ̄;)

人間がその一生の1/3近くの時間を費やす睡眠とは、体と脳にとって必要不可欠なものであり、決してただの怠慢などではありません。

今回は、いまだその全貌が明らかにはなっていない睡眠の持つ役割についての話をしてみたいと思います。




睡眠の役割

人間を含む多くの動物は、昼行性の動物は夜、夜行性の動物は昼といったようにほぼ決まった時間帯に睡眠をとります。

睡眠が持つ役割として確実にわかっているのは、肉体の疲れを取り、体力を回復させる事です。

体内に蓄積された疲労物質を除去するとともに、脳下垂体から分泌される成長ホルモンによって損傷した筋肉を修復し、増強を促します。



疲労物質

疲労の原因とされる疲労物質は長らく乳酸と考えられていました。今でもそのように理解している人はかなり存在します。
乳酸が疲労物質と考えられた根拠は、1929年のカエルの筋肉の研究で、運動後の筋肉に乳酸が増えてくるという現象が確認された事でした。

しかしその後の研究により、2001年に、細胞外に蓄積したカリウムイオンが疲労の鍵となる物質である事がわかり、乳酸は逆に疲労を回復させる役割を果たしている事が確認されました。

現在では、乳酸は疲労物質ではないとされています。

そして2008年には、疲労を感じさせる原因となる「FF」というタンパク質が発見されています。

動物は活動していると、脳や血液、膵臓、肝臓など体内のあちこちにこのFFが増加してきます。
マウスの実験によると、このFFは、徹夜のままでは減少せず、睡眠を取ると除去される事が確認されています。

 

成長ホルモン

成長ホルモン(growth hormone,GH)は、脳下垂体前葉のGH分泌細胞(somatotroph)から分泌されるホルモンです。
幼児期の骨の伸長や、筋肉の成長、代謝の促進などいろいろな役割を果たしています。

Wikipedia:成長ホルモン


成長ホルモンは、運動の後睡眠中に分泌が活発になります。特に睡眠中では深い眠り(ノンレム睡眠のステージIII及びステージIV)の間に多く分泌されています。

規則正しい生活を送り、概日リズム(体内時計)が正常に働いている場合、成長ホルモンは午後10時~翌日午前2時頃までの間に特に多く分泌されるようです。

筋肉は、一度適度に損傷した後、修復される時に強くなります。
筋力を鍛えるには、ただ闇雲に長時間体を痛めつけるトレーニングをすればいいというものではありません。
適度な運動と十分な栄養の摂取、そして規則的な睡眠。これらのバランスが大切です。



しかし、もしも睡眠が体の疲れを回復させるためだけのものならば、ただ一定時間体を動かしたくなくなる欲求が起こるようになっていれば十分であり、わざわざ意識を途切れさせて無防備な状態になる必要性は無いはずです。
特に肉食動物に襲われる危険性がある野生動物にとっては、物音などですぐに目覚められるようにしているとはいえ、意識が無い時間があるというのは命に関わります。

そんなリスクを冒してまで、わざわざ意識を途切れさせる睡眠をとらなくてはならないのは、それが意識を司るにとって何らかの重要な働きを持っているためと考えられています。

睡眠が脳に対してどのような働きを持っているのかは、残念ながら現時点では完全には解明されていません。

しかし、その謎に迫る事ができるいくつかの材料ならば存在します。




不眠記録に挑んだ人々

人間はあらゆる動物の中でも特異な好奇心に溢れる生き物で、わざわざ苦しい思いをしてまで自らの限界に挑もうとします。
生命維持に必要不可欠な睡眠を、どれだけ長い時間とらずにいられるか――そんな危険な挑戦を行った人々が、過去に何人も存在しました。


1959年、アメリカのWMGMというラジオ局の人気DJ、ピーター・トリップ氏が、小児麻痺患者への救済募金を集める企画として、ニューヨークに設置されたガラス張りのラジオブースの中で不眠記録に挑戦しました。

衆人環視の中でずっとしゃべりながら起き続けていた彼は、最終的に200時間(8日と8時間)以上という不眠記録を打ち立てています。

彼は、挑戦開始当初はいつも通りにしゃべり続けていたものの、後半になるにつれてやがて精神に変調が表れ始めました。

彼の健康維持のために立ち会っていた医師を、自分を葬ろうとする葬儀屋だと思い込む妄想に取り憑かれたり、「レコード盤の上を虫が這っている」「時計が人の顔をしてこちらを見ている」などといった幻覚を見たりしたといいます。

挑戦が終了した後、十分な睡眠をとった事で、これらの症状は消え、彼は正常に戻ったようです。

ちなみに、その時の睡眠には通常の睡眠よりも多くのレム睡眠(まぶたの下で眼球の動きが観察でき、夢を見ていると考えられる睡眠の状態)が表れたそうです。


1964年には、アメリカのサンディエゴ州に住んでいた当時17歳の高校生、ランディ・ガードナー氏が、クリスマス休暇を利用して不眠記録の更新に挑みました。

彼は11日間=264時間眠らない事を最初に決めて挑戦を開始。

3日目以降は夜の眠気が辛く、軽い運動や音楽で眠気を紛らせていたようです。記憶力が極度に低下し、簡単な計算も困難になり、さらにひどくイライラした気分に

5日目からは一人で起き続けているのが困難になり、立ち会っていた二人の親友が励まし続ける事でどうにか不眠を維持。この頃には白日夢記憶障害といった症状が表れていたようです。
挑戦の終盤にはマスコミも注目し始め、最後の90時間には睡眠学者も立ち会う事になり、彼のモチベーションも少し高まったようです。眠気はゲームセンターのベースボールマシンで遊んだり、バスケットボールをしたりして解消。

そして、最終的には当初の目標である11日の不眠継続に見事成功し、ピーター・トリップ氏の記録を大きく超える264時間12分という不眠記録を打ち立てました。

挑戦終了直後、彼は半日以上(14時間40分)に及ぶ睡眠をとりました。その後は徐々に睡眠時間を縮め、平均的な睡眠時間に戻っていったとの事です。

11日間眠らなかったからといって、回復のために11日分の睡眠時間を取り戻す必要は無かったようです。


1977年には、イギリス人女性のモーリーン・ウェストン夫人が、「揺り椅子マラソン」という揺り椅子を揺らしながら不眠を続ける大会で449時間(18日と17時間)という記録を出しています。

ただし、この記録については医学的に考えにくいとされ、実際には眠っていても惰性で揺り椅子を動かしていたのではないか、ともいわれており、信憑性には少し疑いがあります。


2007年5月27日、イギリスのコーンウォール州の男性、トニー・ライト氏(当時42歳)が、1964年のランディ・ガードナー氏の不眠記録に挑戦し、それを更新したのだそうです。

挑戦中には、自分の言葉が時々理解しにくくなり、色が明るく見えるのを感じたといいます。

彼いわく、

“生の食品しか食べない「原始ダイエット」のおかげで長い時間脳が活動できた”
“脳を疲れた部分から別の部分に簡単に切り替えられるようになる”
との事ですが、生の食品が脳にどのように影響するのか、また脳の活動部位を切り替えて部分的に休ませるような事ができるものなのか、真偽のほどは定かではありません。

息継ぎをしなくてはならないイルカや、長距離を飛ぶ渡り鳥の仲間は、左右の大脳半球を片方ずつ交互に眠らせてもう片方の脳で活動する「半球睡眠」という特殊な睡眠を行う事がわかっています。

もしも彼の言葉が本当ならば、彼の脳はその半球睡眠に近い状態になっていたのかもしれません。

鬼速:イギリスの男性、11日間不眠記録達成

BBC NEWS:Man claims new sleepless record


注意

世界一の記録を認定・掲載している『ギネス世界記録』では、かつての版では、社会問題や人権問題に抵触し、倫理的・道義的に問題のある行為や、あるいは命に関わる大変危険な行為を伴う内容に関する記録も掲載されていましたが、現在ではそのような記録の掲載・更新を認めていません。
不眠記録も、以前は掲載されていたものの現在は掲載されなくなった記録のひとつです。

この知恵ノートでは過去の不眠記録をいくつかご紹介しましたが、これは決して不眠への挑戦を推奨するものではありません。

不眠記録への挑戦は健康及び生命の維持に大変な危険を伴いますので、決して真似をしないでください。
自己判断で不眠記録に挑戦し、健康を害する結果を招いたとしても、私は一切の責任を負えません。ご了承ください。

 

全く眠らない人間

ここでは、あくまで普段は通常の睡眠をとっている方達の不眠記録についてご紹介しましたが、世界には数例、全く眠らずに生活していると称する人々が存在しているようです。
本当に眠っていないのかどうか信憑性が疑わしい人もいるのですが、中には、脳の働きや遺伝子の変異が原因かもしれないとされる事例もあり、安易に全て嘘と切り捨てるわけにもゆきません。

ベトジョー ベトナムニュース:「眠らない男」、記録を38年間に更新中


サイエンスミステリー「それは運命か奇跡か!? DNAが解き明かす人間の真実と愛」


ただし、これらは仮に真実であったとしても極めて特殊な事例であり、一般的な睡眠時間を必要とする人々と同列に語るわけにはゆかないでしょう。

彼らはもしかすると、いまだ謎に包まれている睡眠の仕組みを解明できる重要なヒントを握っているのかもしれません。




不眠を続けると何が起こる?

上記のように、不眠記録に挑んだ人々には、記憶力や判断力の低下、精神状態の変調、妄想や幻覚の出現といった症状が表れています。

何故幻覚が見えたのかについては詳細は不明ですが、視覚情報として幻覚が見えているという事は、脳の視覚野の活動が関わっていると考えていいでしょう。

視覚野は、普段目で物を見ている時に活動する他、レム睡眠時に夢を見ている間にも活動しているらしい事がわかっています。

また、ピーター・トリップ氏が幻覚として見たという「虫が這っている」とか「時計が人の顔をしている」などといった光景は、もともと彼の脳のどこかに蓄積されていた虫や人の顔といった記憶の情報が、目で見ているレコード盤や時計といった視覚情報との何らかの関連で呼び出されて視覚野の情報処理に割り込んだものと考えるのが妥当かと思います。



近年の研究により、いわゆる「金縛り」、医学的には「睡眠麻痺」と呼ばれる現象を人工的に発生させる方法がわかっています。

知恵ノート:「金縛り」は正体を知れば怖くない!


被験者の眠りが浅いタイミングを見計らって何度も起こす事で、睡眠のリズムが崩れ、入眠直後に夢を見るレム睡眠の状態に突入するようになり、意識が目覚めているのに体が動かない事を認識できてしまう「金縛り」に陥らせる事ができます。

金縛り中には、多くの場合は目は閉じているのですが、脳が自分の体が動かない事に対して自分を納得させる説明をつけようとし、自分が寝ている部屋の様子や、体が動かない原因として想像した体に乗っている何者かの姿などをとして作り上げます。


人間は不眠を続けると、脳がほんの一瞬だけ眠りに落ちる「マイクロスリープ」と呼ばれる状態を繰り返し起こす事で、どうにかして睡眠時間を確保し、脳を休ませようとする事がわかっています。

一瞬意識が飛んで体がガクッとなるあの状態です。

不眠記録に挑戦した人達も、恐らく挑戦中にこのマイクロスリープを起こしていただろうと推測されています。

挑戦中に幻覚を見る現象についても、もしかするとこのマイクロスリープによって金縛りの時に見る夢と同じような事が起こっていたのかもしれません。
脳の判断力が極度に低下し、目を開けて見ている視覚情報がうまく理解できなくなった状態で、マイクロスリープによって脳が瞬間的にレム睡眠に突入し、現実の視覚情報を元に脳が蓄積された記憶から何らかの関連する情報を呼び出してその視覚情報に(誤った)説明をつけようとする――つまり、目を開けながら現実の視覚をベースにした夢を見始めてしまっている状態なのではないかと考えられるのです。あくまで推測ですが。


睡眠が脳に対してどのような働きを持っているのかは完全には解明されていませんが、少なくとも、長時間の不眠が続くとこのようなさまざまな処理の異常が発生してしまうのは確かです。

また、動物実験においては、強制的に眠りを妨げ続けたマウスは、極端な衰弱と体温調節の不良を起こし、脳では視床が損傷し、1~2週間程度で死亡する事がわかっています。

栄養の摂取を断った場合よりも短期間で死に至る事から、短期的には睡眠は栄養の摂取よりも重要とされています。

人間では、健康状態を無視して強制的に眠りを限界まで妨げ続けたという事例は(少なくとも公式には)無いようですが、恐らく同様に最終的には死に至るだろうと推測されています。

このような脳の状態の回復は睡眠によってしか行えず、代替手段はありません。

そういうわけで、睡眠は脳にとって必要不可欠なものなのです。




睡眠と記憶

一昔前、睡眠の役割が解明されておらず、ただの怠慢としか思われていなかった時代。
厳しい受験戦争に挑む受験生に対して、「四当五落」(よんとうごらく)という言葉が使われていました。

これは、「睡眠時間を時間まで削って勉強した者は受験に合格(選)し、時間も眠るような者は不合格(選)となる」という意味の言葉です。

※もともとは中国で598年~1905年まで行われていた科挙(かきょ)という非常に厳しい官僚登用試験に挑む人々に対して使われていた言葉といわれているようです。

もっと厳しい表現としては、「三当四落」などという言葉も。


しかし、睡眠の持つ役割が次第に解明されてきた現在では、この言葉は間違いであるとされ、ほぼ死語となっています。
勉強の効率を良くするためにも、そして勉強した内容の記憶を脳に長期的に定着させるためにも、十分な睡眠をとる事が必要である事がわかってきているのです。

現在進行形で研究が進められている分野の話なのであまり確定的な事は言えないのですが、ひとまず、情報を取り入れた後ですぐにかつ良質で継続的な睡眠をとる事が、その情報を海馬から大脳新皮質へと移し、記憶を定着させるのに有効であると考えられています。

参考リンクをいくつか掲載しておきます。

医学処 -医学の総合案内所-:睡眠は記憶の強化に利益をもたらす。試験前はしっかり寝よう。


AFPBB News:記憶定着には「すぐ睡眠」が効果的、独研究


Pouch:断続的な睡眠は記憶力に悪影響を与える可能性がある


受験などのために勉強をするならば、眠気を我慢してただひたすらに勉強時間だけを増やそうとするよりも、規則正しく十分な睡眠をとって勉強した内容を毎日しっかり定着させ、心身をリフレッシュして集中力を回復させてから再び勉強を始めた方が、中長期的にはより効率が良くなります。
どうしても時間が無い時には一夜漬けもひとつの手段ですが、その記憶は長期的には残りにくくなってしまいますし、睡眠不足で試験当日に集中力を欠いてしまっては元も子もありません。

――つまり、直前になって焦らないように、日頃から規則正しい生活の中で勉強をする習慣をつけておくのが大切、という事ですね。

……自分で言ってて耳が痛いな……。( ̄ω ̄;)




まとめ

睡眠は、肉体疲労の回復脳の機能維持のために必要不可欠なものであり、記憶の定着にも重要な働きをしていると考えられています。

筋力を鍛えたい人も、知識を蓄えたい人も、規則正しく十分な睡眠を心がけましょう。

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