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統計学の基本用語.母数は分母でも全数でもない!: 母数とは母平均や母分散のことである

ライターさん(最終更新日時:2016/10/17)投稿日:

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執筆責任:井口豊(長野県岡谷市 生物科学研究所


この知恵ノートに言及している以下のブログも興味深い。

統計学で扱う「母数」を英語にすると,parameterと言う。「パラメータ」は,日本語でも時々使われる単語である。以下に示すように,母数の定義を理解してないケースが非常に多い。母数の代わりにパラメータと言ってみれば,もしかすると自分の誤りに気づくかもしれない。


なお,母数と共に間違いやすいのが,サンプル数とサンプルサイズである。それについては,私の研究室の統計解説を参照。



Webページを見ていると,統計データに言及する時,どうも
母数=分母
あるいは
母数=全数
と考えているような例が多い。

知恵袋で,「母数」をキーワードにして検索してみて欲しい。そんな質問や回答が,ぞろぞろ出てくる。


統計学とは無関係な話題なら,まだ「俗語」として,母数を全体数の意味で使う用法も許されるだろう。しかしながら,統計学関連の質問でさえ,母数の意味を理解していない人が多い。質問者の場合は初学者だからと言えるかもしれないが,回答者まで母数の意味を理解してないようでは困る。


私自身,知恵袋で以下のような質問をしてみた。

しかしながら,なぜ,いつから,このように誤解されているのか,実質的な回答は得られなかった。

後述するように,統計学の教科書には,母数の定義がきちんと書かれているのである。しかも特に専門書と言うわけでなく,大学1,2年で使う程度の基礎的教科書に書かれていることなのである。それを誤解する例,誤解した回答が非常に多いのである。

例えば,最近の質問
母数の反対?の名称は??
東京の男のうち20歳未満は何%?? という例題で・・・男が700万人 ← これを 母数 と定義

さらには,知恵袋の質問
内定率80%の大学って内定率高い方ですか?
に対する回答
「全学生を母数とする内定率」なら高い方です。

教えてgooでの回答。
母数の意味
ベストアンサー20pt
全議員のうち無作為の100人のアンケートとといった場合全議員(=母数)、100人の
議員(標本数)
ベストアンサー10pt
母数というのは・・・「母集団の大きさ」も確かそうです

livedoor ナレッジでの回答
分母と母数の違いを教えてください。
回答1
関東地区の視聴率調査の場合、関東地区で視聴可能な1500万世帯が母数で、標本
数が600

回答2
母集団の大きさ(総数)として使うこともあり・・・いろいろな意味に用いられる、一般的
な、ある意味であいまいな言葉・・・分母と同一視してこれまで困らなかった

Sooda! での質問と回答
質問:アンケートやリサーチをしたときの母数について、統計学上、いくつあると妥当なのでしょうか?

回答者:長老さん
満足な母数(被験者数)がどの程度か

このように,Q&Aサイトの回答者でさえ,母数=分母,あるいは,母数=全数と思わせるような回答例を挙げている。あくまで一部の例だが,後述する批判的サイトを見ると,さらに,ぞろぞろ例が出て来そうである。

livedoor ナレッジ回答者2が述べたように,それで意味が通じていた,という歴史的背景もありそうだ。

当然ながら,それを批判したサイトも結構ある。

マーケティング・リサーチの寺子屋
"ときどき、分母のことを「母数」と表現するリサーチャーがいてすご~く気になる。"
市場調査業界の内外を問わずよく耳にします・・・ここでいう「母数」とは分数の「A/B」
の「B」の部分のことを指しているようで・・「母数」という言葉には「分母の数」という意味は存在しない。

Interdisciplinary
母数を「分母」と同じ意味で使っているのは、統計学の本をちゃんと読んでいない

ああああ
「母数」を「分母」の意味で使うのはやめろ
新聞に出た,大学生の就職率の話
就職率 = 就職した学生 / 全卒業生,と計算し,全卒業生を母数と呼んでいる。この用法を批判しているブログである。

実は,この記事,日本を代表する新聞社である,朝日新聞の,しかも統計調査で使われた誤った用法なのである。統計調査で,統計用語を間違うとは情けないではないか。

これら批判的サイトでは,その誤用法に業を煮やしている,とさえ言えそうなコメントもある。

母数について再度検討しよう。

統計学では,例えば,正規分布は,平均μ,分散σ^2で決定される確率分布だが,このように確率分布を決定する統計量を母数(パラメータ,parameter)と言う。

文字通り,それによって,分布の数式が表現でき,分布形も定まるので,パラメータと呼ばれる。母集団確率分布の特徴を表す特性値なのである。これは統計学の教科書に普通に書かれていることだが,なぜか,母数=分母,という誤用法あるいは俗的な用法が浸透?しているらしい。

さきほど,朝日新聞の誤った用法を書いたが,朝日新聞のオンライン用語辞典kotobanku(コトバンク)にも,母集団を規定するパラメータときちんと書かれているのである。

検定の種類に言及する際に,パラメトリックとかノンパラメトリックという用語を聞いた人は多いだろう。このパラメトリック(parametric)という語は,パラメータの形容詞である。

検定の際に,ある母集団確率分布を仮定し,その分布を規定する母数の問題に帰着させて考えるのがパラメトリック検定である。代表的なのは,平均と分散という二つの母数を利用したt検定である。

一方,確率分布の形を仮定せず,したがって母数を考えないのがノンパラメトリック検定である。例えば,マン・ホイットニー(Mann-Whitney)のU検定がそれである。

パラメトリックとノンパラメトリックという語は簡単に使われているが,それがそれぞれ,母数検定と非母数検定の意味(日本語)であると,どのくらいの人が理解しているだろうか?

このように,母数とか,パラメータあるいはパラメトリックという用語で,その具体的用法を知れば,最初に示した知恵袋やその他Q&Aサイトの回答者の何人かは,全く的外れな説明をしていることが分かる。

ちなみに,教えてgoo回答者が述べている「母集団の大きさ」は,母数ではない。

母数の例を一つ挙げろと言われたら,平均(正確には,母平均)を挙げれば良いのである。平均は最も良く知られた基本統計量であり,かつ,最も代表的な母数である。難しい計算でも,ややこしい理論でもない。ごく一般的な統計用語である。

例えば,手元にある基礎的な統計教科書「統計入門」(和田秀三・著,サイエンス社)でも,母数の例1として,真っ先に母平均を挙げている。

しかし,ネットで検索してみて,分数の分母,あるいは,全体数の意味で,「母数」という語が頻繁に用いられているのを知った。このような統計学用語の誤用が見られる背景には,パソコンや統計ソフトの発達と普及に伴って,その利用スキルだけ習得した教員や学生が増えていることがあるのかもしれない。つまり,理論的学習がおろそかになった教員や学生が多くなっているかもしれないのである。



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